村企画/大切なことだけがランダムで決まる村のバックアップ(No.4)

大切なことだけがランダムで決まる村 †

あの日、この村では珍しく、雪が降った。
地面の色が光るほどには積もらなかったけれど、
広げた手のひらの上で、仄かな白が手袋を濡らすだけで
それは十分に非日常だった。

あの日。
村の"守り神"を、壊したのは、
私たちだけの秘密。

―――

村の発展のため、観光事業に力を入れるから、
村おこしの目玉に、"守り神"を一般公開して、お祭りをしましょう。

ああ、なんて安易な提案なんだろう。
結論ありきの民主的な会議を経て決定されたその観光事業の
責任者となったのは、観光企画課に所属している私、氷室だった。

まず初めに、村人たちの意見を掬い上げるという名目で、
「観光事業意見交換会」を取り行うことにした。
厳正なる抽選の結果、
選ばれた村人は全員、"15年前のあの日のメンバー"である。
不思議なことも、あるんだなあ。

村役場の地下にある、倉庫の中。
見るも無残な姿になっている"それ"は、村外の人間が見れば、ただの銅像にしか見えない。
しかし、私たちにとっては唯一無二の存在。
いや、存在だった。
私たちが壊してからの15年間、急ごしらえで作ったハリボテを
村人全員が有難がっていることは、私たちしか知らない。

一般公開されたら、メディアにも紹介されることになる。
そうなったら、ハリボテでは誤魔化せない。

あの日のメンバー全員で責任を取る？
そんなの御免だ。
みんな、そう思っている。

村の中心にある、公民館。
今日、15年ぶりに、あの日のメンバーが揃う。
私たちは、表面上、有意義な意見交換をしなければならない。
ただ、それは、あくまでも形だけのディスカッションだ。
私たちの本当の目的、それは――

――誰が、責任を取って、守り神の怒りに触れるか。